歴女の血がフツフツと湧く「北方民族博物館」
歴史好きというと戦国・幕末時代が好きという方も多いかと思いますが、私は古代の歴史も好きです。
古代の歴史はどんな人物が活躍したのかという、ヒーロー的な物語が少ない(資料がない)のですが、その時代に人がどう生きたのかということがどんどん解明されています。
技術がない時代。
人々は知恵と工夫を凝らして、その糧を得ていたようです。
そして、古代の歴史は北の大地にもありました。
それを見学できるのが網走市にある北方民族博物館です。
ここはオホーツク民族だけに限らず、アイヌ、アリューシャン列島のアリュート、アラスカやグリーンランドのイヌイト、スカンジナビアのサミ、北西海岸インディアンやサハリン、シベリア地域など、北極を中心とした地域に住む諸民族の民族衣装・狩猟道具など、約900点に及ぶ実物資料が展示されています。
北天の丘あばしり湖鶴雅リゾートから車で約10分のところにあるので、サクっと行ってこよう、ぐらいの気持ちでいましたが、滞在時間は一時間と、タップリしっかり見応えがありました!
展示ゾーン入り口では「アラスカのシャマンの仮面」が出迎えてくれます。
(ちょっと怖いけど...)
1番上の顔は人間の世界を、真ん中のフクロウは動物の世界を表し、下の大きな顔は精霊を表しています。
そして、青く光る通路を抜け、北方民族の世界に入っていきます。
環境に順応した人たち
人類はアフリカに起源を持つと考えられている。
この低緯度、熱帯の地域から、長い時間をかけて北半球の高緯度、極北の地にまで生活の領域を広げたのは、いまから1万年以上も前のことである。
人類が北方へ進出するためには、寒冷地の厳しい自然条件を克服する必要があった。北方の環境のなかで安定した生活を可能にしてきたのは、人間の生理的な適応ではなく、住居や衣類をはじめ生活に必要な道具を生み出し利用する、文化的な適応によるところが大きい。
何があって、何を求め、人々は北の地を目指したのか...
それは未だにわかりませんが、たどり着いた地で生きていこうとする力が知恵と工夫を生んだのだと思います。
次は、各地の衣装展示ゾーンへ。
同じ北方民族でも、地域によってその装飾の施し方少しずつ違います。
前列には各地の晴れ着や花嫁衣装が飾られ、後列には日常的に使った衣装が展示されています。
服だけではなく、身につける装飾品の展示もあります。
身を飾り立てるオシャレなアクセサリーとしてではなく、主に魔除けの意味を持たせることが多かったそうです。
一つ一つの文様にはそれぞれに意味があり、その人自身に合った(性別やその人の持つエネルギーなど)装飾を施したそうです。
やがて、その装飾品に「玉」が使われるようになりますが、鉱山物が採れない北の地の人々はそれを「交易」という手段で手に入れるようになります。
そして、穀物や葉物栽培が困難な環境ですので、煙草などの嗜好品も交易によって手に入れるようになりました。
食と住居のゾーンでは、様々な食器類が展示されています。
扱う食材によって器が違ったり、保存食が中心な食生活なので保存加工するための道具、器など、馴染みのあるものから物珍しいものまでたくさんありました。
食器類にも文様が施されていましたが、それをみて。食に対する気持ちの深さも感じました。
食べ物をとても大切にしていたんだろうなって。
衣食とくれば、次は住です。
各地の住居の模型が展示されてました。
同じ北の地でもスタイルに違いがあるのが面白いなって思います。
そして、こちらの展示は原寸大で再現されたもので、見ごたえがあるのはもちろん、造り方の工夫がすごいなって思いました。
柱に鯨の骨を使ったり、穴を掘ることで骨組み部分を少なくしたり。
防寒だけではなく、過ごし方もよく考えられた住居だなと思います。
300年前のエスキモーの冬の住居を原寸大に再現したもの。夏は獲物を獲るために移動生活をし、冬は住居で暮らすといったスタイルなんだそうです。
— 鶴雅デジタルコンシェルジュ (@tsurugaresort) July 19, 2019
住居の柱にはクジラの骨が使われているんですって!資源が少ない北方地域だからこそ、資源活用の知恵がすごいなって思います。 pic.twitter.com/T8vpmZ6aEW
北方民族の最大の特徴である「北方民族の精神世界」ゾーンには、儀式に使う仮面・太鼓がずらりと並んでました。
まず、正面には大きなトーテムポールが展示されています。
トーテムポールって、屋外にあるものとばかりだと思っていましたけど、室内、それも大黒柱にも使われたそうです。
一番上にいる鷲が隠れてしまってますけど、このトーテムポールには、熊、狼、などの動物が象られています。
そして、各地で行われていた儀式の道具が展示されています。
これらの道具は誰しもが使えるのではなく、シャマンと呼ばれる、特別な能力がある人しか使うことができません。
シャマンとは巫師や祈祷師のことで、自然界と交流して災いや病気などを祓う能力がある人とされています。
北方に暮らす人達は、その資源が採れる時期が短かいというのもあって、自然に対する畏敬の念が強く、祭りや儀式を大切にしていたようです。
最後は、北方の生業のブースです。
狩猟を主にしてきた北方の暮らしには、狩猟道具が必須です。そして、狩猟には危険が伴います。命がけで糧を得る生活のいろいろな工夫が施されていました。
船の装飾が美しい。
道具の機能性だけではなく、装飾を施すことが自然と付き合っていくことにもつながるんじゃないかな。そんなことも思いました。
魔除けなど身を守るための装飾は、現代では民族工芸品として形を変えつつあるそうです。
北極を中心とした極寒の地で暮らす人々の知恵と交易の仕方、生活に対する概念は、資源が少ないからこそ生まれた知恵だったんですね。
生活用具に文様を施すのも、感謝や大切にする気持ちの表れなんだなと思います。
そして、受付では音声ガイドの無料貸し出しがあって、それを使うとより展示品の意味がわかってかなり楽しめました。
返却のとき、受付のお姉さんが「お役に立ちました?」と、笑顔で聞いてくれたとき思わず「めっちゃ楽しめました!」って言っちゃいました。
こういう心遣いも嬉しかったです😊
網走にある、北天の丘あばしり湖鶴雅リゾートは、かつてこの地で暮らしていたとされるオホーツク民族を始めとした北方民族をテーマにしているお宿です。
メインロビーや足湯があるモニュメントは、北方民族が暮らしたテント住居をイメージしています。
お泊りの際には、ぜひこの北方民族博物館も訪れてほしいなと思います。